【このブランド知ってる?】ラングラーは泥臭くない。「スーツの仕立て屋」が作った最も美しいジーンズ
どうも!
インディゴの香りでご飯が3杯食べられる男、コロモビト.ライターのコガタです。
ブランドの奥深い魅力やモノづくりの背景を徹底的に深掘りしていくシリーズ「このブランド知ってる?」。
今回ピックアップするのは、Levi's(リーバイス)、Lee(リー)と並ぶ世界3大デニムブランドの一角、「Wrangler(ラングラー)」です。
皆さんは、ラングラーというブランドにどんなイメージを持っていますか?
「カウボーイ」「荒野」「泥臭い」「無骨なアメカジ」……おそらく、そんな土臭い印象を持っている方が多いのではないでしょうか。
しかし、ラングラーのルーツを深く掘り下げていくと、驚くべき真実が見えてきます。
結論から言いましょう。ラングラーは、3大ジーンズブランドの中で最も「スラックスのように美しく、ドレスライクな大人のジーンズ」なのです。
なぜ、泥だらけのカウボーイが穿くジーンズが、最も綺麗で美しいのか?
今回は、知れば必ず穿きたくなるラングラーの「美しすぎる機能美」の世界を深掘りしていきます。
実は巨大ワークブランドの「異端児」

ラングラーの美しさを語る前に、少しだけ彼らの「ルーツ」に触れておきましょう。
ラングラーは、ある日突然ポンッと生まれたブランドではありません。母体となっているのは、1904年に創業した「ハドソン・オーバーオール・カンパニー」というアメリカの老舗ワークウェアメーカーです。
後に、鉄道員から贈られた鐘(ベル)が工場のインディゴの粉塵で真っ青に染まっていったことから、「ブルーベル」と社名を変更。数々の企業を買収しながら、アメリカ有数の巨大ワークウェアカンパニーへと成長を遂げました。
そんな「ゴリゴリの労働着のプロ集団」であるブルーベル社が、1947年に満を持してウエスタンウェア(カウボーイ向け)市場へ打って出るために立ち上げた新ブランド。それこそが「ラングラー」なのです。
作業着ではなく「スポーツウェア」

ラングラーの独自性を紐解く上で、絶対に外せない「生い立ち」の違いがあります。
王様であるリーバイスが生まれたのは1850年代。ターゲットは、一攫千金を夢見て鉱山で土を掘る「金鉱夫」たちでした。つまり、彼らのルーツは紛れもなく「過酷な労働に耐えるための作業着(ワークウェア)」です。
一方、ラングラーを象徴する名作モデル「11MW(後の11MWZ)」が誕生したのは1947年。リーバイスから遅れること約100年、彼らがターゲットにしたのはただの牧童(農作業者)ではなく、「ロデオ」という命がけの競技を戦うプロのカウボーイたちでした。
暴れ狂う牛や馬にまたがり、激しい動きとスピードを競うロデオ競技。 そう、ラングラーにとってのジーンズとは、土を掘るための作業着ではなく、トップアスリートが最高のパフォーマンスを発揮するための「スポーツウェア」だったのです。
「スーツの仕立て屋」が作った美脚

単なる「頑丈さ」だけを求めた作業着と、「激しい動きをサポートする機能性」を求めたスポーツウェア。この違いが、ラングラーに“ある奇跡”を起こします。
アスリート(カウボーイ)たちをより快適に、そして観客に向けて「より美しく魅せる」ため、巨大ワークブランドであるブルーベル社は、なんとハリウッドの“スーツの仕立て屋”にジーンズの設計を依頼するという型破りなアプローチに出ました。 それが、西部劇の衣装を手掛けていた有名なテーラー、「ロデオ・ベン」です。

当時のワークパンツは、とにかく動きやすさを重視した土管のような太いシルエットが主流でした。しかしロデオ・ベンは、テーラーならではの立体裁断の技術を注ぎ込みます。
股上は深くしっかりと腰を包み込み、太もも周りの野暮ったいダボつきを排除。裾に向かってストンと落ちるその直線的なラインは、まるでセンタープレスの入ったスラックスのように上品なシルエットを実現したのです。
命と相棒(馬)を守る究極の機能美
仕立て屋としての美学は、カウボーイの命を守るためのディテールにも見事に発揮されています。
牛の角から命を守る「ジッパーフライ」

ラングラーといえば、フロントがジッパーで開閉する「ジッパーフライ」をいち早く採用したことで有名です。「脱ぎ着がラクだから」と思われがちですが、実は違います。
暴れ狂う牛に乗る競技中、もし鋭い角がフロントのボタンの隙間に引っかかってしまったら……そのまま引きずり回され、命に関わる大事故に繋がります。ジッパーフライは「カウボーイを死亡事故から守るための革新的な安全装置」だったのです。
鞍(サドル)を傷つけない「引き算のデザイン」

機能美の追求は止まりません。馬の鞍(高価なレザーサドル)を傷つけないよう、金属の突起を完全になくした「ノンスクラッチリベット(平らなリベット)」を採用。
激しい落馬でもベルトがズレないよう、他社が5本だったベルトループを「7本」に増量。

極めつけは、腰回りの切り替え布(バックヨーク)です。リーバイスなどとは、あえて「上下逆向き」に生地を重ねて縫うことで、馬上で激しく揺れてもポケットの中身が滑り落ちにくい構造にしているのです。
無駄を削ぎ落とし、必要な機能だけを美しいデザインに落とし込んだこのジーンズには、まさに「引き算の美学」が詰まっています。
弱点「ねじれ」を克服した革命的生地

さて、コロモビト.で以前公開した「ジーンズの縫い目がねじれる理由」の記事を読んでいただいた方なら、ジーンズが抱える“ある宿命(弱点)”をご存知かもしれません。
一般的なジーンズは、「右上がり(または左上がり)」という斜めの織り目で作られているため、洗濯すると生地全体が強烈に「ねじれてしまう」性質を持っています。
ヴィンテージ好きはそのねじれを「不完全な美」として愛していますが、完璧なスポーツウェアを目指すラングラーにとって、シルエットが崩れるねじれは決して許されませんでした。
1964年の奇跡「ブロークンデニム」の誕生

「洗ってもねじれない真っ直ぐなジーンズを作れないか?」 その難題を解決するため、1964年にラングラーはジーンズの歴史を覆す画期的な生地を開発します。それが「ブロークンデニム(壊れ綾)」です。
一定方向だった織り目を、あえて「右、左、右、左……」とジグザグに交差させて織り上げるという特殊な構造。これにより、生地がねじれようとする力を互いに打ち消し合い、「洗っても絶対にねじれない究極のジーンズ(13MWZ)」を完成させたのです。
ねじれないということは、ロデオ・ベンが計算し尽くした「スラックスのような美しいシルエット」が永遠に保たれるということ。
このブルーの発色が鮮やかなブロークンデニムは、当時のカウボーイの間で流行していた「アイロンでセンタープレス(折り目)を入れて小綺麗に穿く」というドレスアップのスタイルに見事にハマり、彼らを全米プロ・ロデオ・カウボーイ協会(PRCA)の「公式ジーンズ」へと押し上げました。
おわりに:大人が選ぶべき「第3の選択肢」
「カウボーイのジーンズ=泥臭い」。 そんなイメージは、ここまで読んでいただいた今、もうすっかり消え去ったのではないでしょうか。
Tシャツで無骨に穿くなら王道のリーバイス。ジャケットや革靴で小綺麗にまとめたいならラングラー。 アイロンでセンタープレスを入れて、スラックス感覚で穿きこなす。そんな大人の粋なスタイルを、ぜひあなたも体験してみてください。
次にショップで「W」のステッチを見た時、きっと今までとは違う美しいプロダクトに見えるはずですよ。
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