【対談】Re made in tokyo japanの最高傑作『ドレスT』ができるまで
こんにちは。コロモビト.です。
Tシャツといえばカジュアルの定番アイテム。
襟のないTシャツはどうしてもカジュアルな印象になってしまい、上品なジャケットを羽織ったときに雰囲気がマッチせず、ただ羽織っただけのように華奢にみえてしまいます。
ところがそんなTシャツの常識を見事に覆したのがRe made in tokyo japan(以下、Reと表記させて頂きます)の「ドレスTシャツ」。
まるでドレスシャツのように綺麗でドレッシーなTシャツでありながら、抜群の耐久性とコストパフォーマンスでファンを増やし続けています。
今回はスタンダードでスタイリッシュな日本製を貫くブランド「Re」とセレクトショップ「ROCOCO」の対談でドレスTシャツについて語って頂きました。
最高傑作ドレスTシャツがどのように生まれ、どのような試行錯誤の上で作られたのかをご覧ください。
Re made in tokyo japan ブランドプロフィール
東京下町の老舗ファクトリーメーカーで経験を積んだ、早川・ 坂倉の二人によって2007年に東京・代官山で創設。
欧州の名門ファクトリーブランドのようなクリエイティブでいてクラフトマンシップなスピリッツを追求・踏襲し、シンプル&スタンダードそしてスタイリッシュなアイテムを上質な日本製オンリーでリリースし続けています。
登場人物 プロフィール
早川 英也(写真中央)
1974年生まれ。Re made in tokyo japanの代表兼デザイナー。
遅沢 晃大(写真右)
1976年生まれ。ROCOCOのバイヤー。
足立 太(写真左)
1987年生まれ。ROCOCOのモデル兼コロモビト.執筆者
ドレスTシャツについて語る
ドレスTシャツの展開・拡がり
― 足立 ―
まずはドレスTシャツの現在の展開と販路の拡がりについて教えてください
― 早川 ―
2017年春夏シーズンにリリースを開始して、 ドレスシャツのように上品な東京製のTシャツという事とプライス以上のクオリティが好評で、年々販売数を更新しています。
松屋銀座百貨店からお誘いがあり、2018年の春から期間限定店舗(ポップアップ)での販売を重ねて、その年の8月にはフロアのTシャツ販売数記録を作りました。その評判もあって伊勢丹新宿百貨店からもオファーをいただき、こちらでもフロアでトップクラスの販売数となりました。
現在では松屋銀座本店・伊勢丹新宿本店・日本橋高島屋・大丸東京と、東京を中心に百貨店での実店舗販売が拡がっています。
― 遅沢 ―
ドレスTシャツはROCOCOのお客様にも大好評です。
始めは半袖のクルーネックだけでしたが、今は半袖のVネック、クルーネックの長袖と、バリエーションを増やしていってます。
カラー展開も始めは2色でしたが、今は5色を取り扱うようになりました。
実売のタイミングまでに色やサイズが欠けてしまうくらいの勢いで売れていますね。
ドレスTシャツの企画・素材・デザイン
― 足立 ―
ドレスTシャツが完成するまでの、立案から製作、素材デザインについて教えてください。
― 早川 ―
以前からカジュアルなTシャツはたくさんあるけれど、上質なジャケットのインナーに使えて、Tシャツ単体でも映えるドレスシャツのように綺麗でドレッシーなモノは少ないと感じていました。
高額なインポートブランドではそのようなTシャツもあるんですけど、1万円以下では探せない状況でした。
それで取扱店セレクトショップのバイヤーの方から、「そんなTシャツを国産カットソーが得意なReが製作してくれたら」とのリクエストがあったんです。
国産専門の東京下町のファクトリーメーカーで経験を積んだ自分たちだからできる、ドレスなTシャツの決定版を作ろうと、糸や素材の選定を繰り返し、サンプル製作を開始したのが2015年の事でした。
― 遅沢 ―
たしかにここ数年は、ラフでカジュアルな無地Tシャツが群を抜いて人気だったので種類も山ほどあります。
その無地Tシャツ人気の流れはいろいろ変化しながら現在も続いています。
例えば型であればポケTから始まり、ヘンリーネック、モックネックに広がり定番化しました。サイズについてもタイトフィットからルーズフィットへなど・・・さらに機能素材が取り入れられ、生地もどんどん進化していってます。
そんな中、新しい切り口の定番として登場したのが『ドレスTシャツ』ですね。
― 足立 ―
僕が知る限り、ドレッシーな白いTシャツって透けやすかったり、ヘビーウエイトのTシャツは粗野感があってカジュアルな印象になったり、本来はツヤ感と生地厚の両立って難しいと思うんです。でもドレスTシャツはその両方を兼ね備えているように感じていて。
その辺の工夫をこっそり教えていただけないでしょうか?
― 早川 ―
まず、コンセプトである「ドレッシーなTシャツ」にするため、コットンの中でも上品な光沢感と滑らかな風合いが特徴の高級な超長綿(※)に限定して仮縫いをし、それを洗濯テストを何度も行い、素材を絞り込みます。
(※)超長綿:繊維が細く長く強い、光沢がある高級綿。綿繊維には繊維の長さが産地によって短いモノと長いモノで差がある。一般的に繊維の短いモノは下級綿とされ、長いモノは細い高級糸となる。
中でも高級ドレスシャツに使用されるドレッシーな120番手の糸に着目しました。
ですが、極めて細い120番手では 上品な雰囲気は出せるんですが、 どうしても華奢な生地になってしまい、1回洗濯したら縮んでしまいました。
それだと耐久性が足りず、納得できるものにはならなかったんです。
Tシャツの生地にはすぐにへたれない耐久性が必要です。日常的に着ていただきたいモノなので。
そこで120番手の糸2本を一本の糸に撚り合わせて倍の太さにしました。
更にその糸を2倍使用する「ダブルジャージー両面編み」の手法で、生地にハリと耐久性を持たせることを実現させたんです。
そうしてドレスシャツのような光沢感があり、ヘビーウエイトTシャツのような厚みと耐久性も備えた生地が完成しました。
上品な雰囲気でありながら透けにくいという長年求めていた理想的な素材です。
― 遅沢 ―
希少な最高級超長綿を贅沢に使用して差別化するだけじゃなく、ヘビーウエイトにすることでトレンド感もありますね。
上品でありながらも丈夫で普通に洗え、透けにくいのもありがたい、もちろん着心地は最高!まさに良いとこどり。
あと、専用BOXに入った状態での販売なので、「プレゼントや贈り物にも向いている」というところも、選ばれる理由の1つだと思います
こんなすごいTシャツを、お客さんが迷わず購入できる価格で作ってしまうところがReさんの凄さなんだと思いますね!
― 早川 ―
生地の次はデザインですね。
デザインディテールに関してはシンプルでソリッドな雰囲気でありながらも、作り込んだディテールを追求しました。カットソーというよりは布帛シャツに近い、重厚な縫製仕様です。
たとえば衿裏は補強パーツで二重にし、衿周りも補強バインダーで生地を4重にして補強するなどこだわりを詰め込んでいます。
衿は細幅でシャープさを演出していますが、そのほかの部分を重厚にしっかりと縫製しているので決して華奢にはなりません。
ちなみに通常の縫製糸はスパン糸を使用するんですが、ドレスTは裏側の糸にウーリー糸を使用しています。
これは糸切れがしにくく伸縮性に優れた糸で、レオタードや水着などを縫製するときに使用する糸なんです。欧米のハイブランドのTシャツには昔からよく使用されているんですが、通常の糸より縫製が難しいので上手に扱える工場が少ないんですよ。
― 足立 ―
詳しく教えて頂いてありがとうございます。
実際に着させていただいていますが、着ているとほんとに上質さがわかります。
光沢感があるのにこんなにしっかりしたTシャツは他にみたことありません。
少し気になったのですが、この袖のスリットは何のためにあるんですか?
― 早川 ―
デザインの印象としての面もありますが、男性は筋肉があるから腕を曲げたときに筋肉が盛り上がって、袖回りがパツって張ってしまうからそれを逃がしてあげるためですね。
デザインだけじゃなくて機能としてもそういった理由があるんですよ。
裾にもスリットがあり、後ろの着丈を長くしています。洗濯を繰り返して型崩れすると、前後差が出てきて歪んでしまうんですが、後ろの着丈を長くとっていると多少縮んでしまってもシルエットが損なわれにくいんです。
長く着てもらう為には、そうしてあげた方がバランスが良いと考えました。
― 遅沢 ―
パーフェクトインナーや他のアイテムもそうですが、Reのデザインはいつも理由があって商談の時にこんなふうに説明してくれますね!腕の筋肉の話は初耳でしたが...
自分も商品を選んだり、企画する時はそれぞれ自分なりの理由だったり、意味を持たせるようにしています。
もちろんトレンドや自分の感覚的な部分もありますが、プラスアルファの意味を持たせることで、商品の販売実績を通じてなぜ人気があるのか?なかったのか?判断材料の一つになると思っています。
― 足立 ―
そういえば後ろ着丈を長めにしてるのは、パーフェクトインナーもそうですよね。
― 遅沢 ―
ちなみにパーフェクトインナーもリピート率が多くて、毎年販売枚数は増えていますよ。
ドレスTシャツ完成までの苦労話とこれから
― 足立 ―
ドレスTシャツは素材や糸の選定だけでもかなりたいへんそうですが、その後のサンプルは何回くらい作ったんですか?
― 早川 ―
相当な数を作りましたよ。
「もっといい生地があるんじゃないか」って探求しすぎて、途中で一回諦めた事もありました。
さっきの重複にはなるんですけど、
ドレスシャツのような綺麗でドレッシーなTシャツというコンセプトが故に透けやすかったり、1回洗濯したら繊細な生地だからテロってなってしまったり、縮んでしまったり。そういったデメリットを、様々な角度から払拭していくんですね。
例えば、上品なTシャツだから襟のバインダーも細くしてるんですけど、実はバインダーが細いと安定せずに裏返っちゃったりするんですよ。それを安定させるために裏糸にウーリー糸を使って補強のバインダーをしたりとか。
そういう事を何回もやって「この角度じゃだめだからもう少し角度を緩くしよう」とか何回も何回も調整しました。
― 足立 ―
想像しただけでたいへんそうですね。
「良いモノを作りたい職人」でないとそこまで作り込めないですよ。
― 遅沢 ―
前々から企画してて時期を狙って発売したんですか?
ドレスTシャツの販売はタイミングが本当に絶妙だったので、それも狙って発売したのか気になっていました。
― 早川 ―
それはちょっとありますね。今は上品だったりキレイめな、素材・デザインの反応がいいので。
もっともっとアメカジ系の粗野感のあるヘビーウェイトが好反応になる時代もあると思うので、そうなったらそういうのを提案できればいいと思ってます。
「Reが作るヘビーウェイトの決定版」みたいな。
ただ、それは今ではないと思っています。
― 足立 ―
ドレスTシャツとはまた違う、そういうのも楽しみですね!
最後に
Re made in tokyo japan最高傑作のドレスTシャツ。
1枚のTシャツが完成するまでのストーリー、職人気質な思いや細部へのこだわりを語っていただきました。
今回で三回にわたって記事にしてきたReさんとの対談は終了です。
ブランドの事がよくわかるので、下にリンクがありますので、ぜひ第一話・第二話も目を通してみてください。
Re は日本製のシンプルベーシックなクロージングブランドです。
ですが、今回の対談を通じて「ただそれだけではない」ということを強く感じました。
Reのプロダクトは、 『合わせやすく、長持ち』 。
購入し、コーディネートを考え、着て、洗濯をし、また違うコーディネートを考え、着て、洗濯をして…。じわじわとその良さをわかっていく。
もちろんそういうモノは一朝一夕で形にできるものではなく、東京下町のファクトリーで経験を積み、素材やデザインと向かい合い続けたからこそ実現できる、早川さんならではの服。
その素晴らしさを一人でも多くの方に味わって頂けたらと思います。
良いモノを作りたい職人気質なRe made in tokyo japanの今後のリリースも目が離せません。
▼ 第1話はコチラ
ReとROCOCOの歩み
▼ 第2話はコチラ
Re made in tokyo japanのデザインの流儀
▼ 第3話はコチラ
Re made in tokyo japanの最高傑作ができるまで