どうしてジーンズは色落ちするの?欠点だらけのインディゴの魅力
パンツの代名詞ともいえるジーンズパンツ。
今でこそ色鮮やかなカラージーンズや眩しいホワイトジーンズもありますが、
やっぱりジーンズと言えばインディゴで染めたインディゴブルー。
今回のコロモビト.では、
ジーンズを語るのに欠かせない「インディゴ染料」についてお話しようと思います。
欠点も魅力なインディゴ
味のある染まり方をするインディゴ
インディゴで糸を染める方法は、大きくわけてロープ染色と枷染め(かせぞめ)の2種類があります。
ジーンズ用の糸を染めるときはロープ染色を用いるのが一般的です。
ロープ染色はロープ状に束ねた糸を染料の液に浸け、 その後空気に触れさせて酸化させる工程を繰り返して染めていく方法です。
インディゴ染料は繊維内部への浸透力が弱いので、いわゆるインディゴブルーの深い色を出すには、何度も何度もこの作業を繰り返す必要があります。
また、ロープ染色で染める糸は束ねられたまま浸透力の弱いインディゴの染色液に浸けられるので、糸の中心まで染まりません。
これを「中白」と言います。
ジーンズはこの中白の糸を縦糸に、染められていない白糸を横糸に織られます。
ジーンズが味わい深い色落ちをしていくのは、このインディゴの染まりにくさが要因のひとつです。
ロープ染色で染められたジーンズは、履きこむほどに中白の部分が顔を出し自分だけのアタリが出来ます。
これによって自分だけのジーンズに育てていくことができるのです。
育てる楽しみも味わえるインディゴ
インディゴで染めたジーンズの醍醐味と言えば、何と言っても「エイジング(経年変化)」です。
インディゴ染料は繊維への浸透力も弱いですが、粘着力も弱いんです。
つまりとっても「色落ちしやすい」。
染料としては欠点だらけな気がしますが、これも見方を変えれば魅力になります。
インディゴで染めたジーンズは、長く愛用すればするほど自分の身体に馴染み、自分の為の一着になっていく…そんな「育てる喜び」があります。
インディゴにまつわる勘違い
そんな魅力にあふれた染料であるインディゴですが、気になっていることがありまして…。
よくデニムの商品説明で使われる「ピュアインディゴ」という言葉。
ピュア=無垢=天然 と、夢見がちな連想をしちゃいますが…ピュアインディゴは全っっ然天然ではありません!
科学の力によって生み出されたバリバリの人工物!合成染料なんです!!
*ナチュラルインディゴ=天然インディゴ・・・正真正銘の天然物!現在はほぼ流通していないインディゴ染料
*ピュアインディゴ=合成インディゴ・・・近代科学が生み出したインディゴ染料に限りなく近い化学式を持った青い染料
ちょっとややこしいというか…ピュアインディゴなんて言われたら天然物の印象を持ちますよね…。
由緒正しいナチュラルインディゴ染料とは?
ナチュラルインディゴは人類が古代から使ってきた由緒正しい染料です。
エジプトではなんと5000年以上前のミイラがインディゴで染められた布を纏っているそうです。
ずっと昔から使われてきた染料ですが、自然の物なので精製したって不純物も混じってきます。
不純物というとちょっと印象が悪いですが、混じりっ気があるからこそ、かすかに他の色が混じり、色に深みがあると言われています。
ただ、ナチュラルインディゴは安定した染めが難しく、熟練した技と多くの手間が必要になるため、今では殆ど使われることがなくなりました。
ピュア=無垢=天然…じゃないピュアインディゴ染料
さて、上で散々ピュアインディゴに文句を言いましたが、ピュアインディゴは決して悪い物ではありません。
ピュアインディゴがナチュラルインディゴに取って代わったのは1900年代の初頭。
ヴィンテージジーンズも含め、世界に存在する素晴らしいジーンズの数々は、そのほとんどがピュアインディゴで染められた物です。
そして、このピュアインディゴという扱いやすい染料があるからこそ、今日のジーンズは手軽に楽しめるおしゃれとして世界に広く知られているのです。
なぜジーンズはインディゴなのか
さて、やっとジーンズの話題ですが、なぜジーンズの染料としてインディゴが使われるようになったのでしょう。
ジーンズの歴史は1850年代、ゴールドラッシュに沸くアメリカで、雑貨商のリーバイ・ストラウスが作ったことに始まります。
キャンバス生地を使った丈夫なパンツは、鉱山労働者の作業服として瞬く間に広がりました。
ちなみに、最初期のカラーは生成りのまま。
その後、素材はより丈夫なデニム生地に、色はインディゴブルーとなりました。
ここでインディゴが出てきました。いったい何故わざわざ染まりにくいインディゴで染めたのでしょうか。
実は、天然インディゴにはピレスロイドという虫よけ成分が含まれていて、昆虫や爬虫類、両生類などに対して神経毒として殺虫効果があるそうです。
ピレスロイドは、虫に対して危険な毒である一方で、温血動物(哺乳類、鳥類)にはほとんど無毒ということで、人間は着用しても安心です。
害虫や毒蛇がうじゃうじゃいる鉱山で働く採鉱夫に、「虫や蛇よけの効果が期待できる」インディゴ染めのジーンズが広まるのは当然ですね。
圧倒的な認知度と人気を誇ったリーバイストラウス社のブルージーンズがジーンズの代名詞となり、ジーンズのカラー=インディゴブルーという共通認識が作り上げられていきました。
なお、虫よけ蛇よけに関しては、実際のところ染色されたジーンズはピレスロイドの含有量が微量のため、それほど期待できなかったというオチが付きます。
昔気質のマタギさんなんかは、今でも験担ぎに近い感じでインディゴブルーのジーンズを履かれるようですが…。
そして今日では前述のとおり、天然のインディゴ染料は高価なため、より安く簡単に作ることができ長期保存が可能な「合成インディゴ」が主流となりました。
この合成インディゴにはこの虫除け成分は全く含まれていませんので、あしからず。
4. 最後に
味わい深いムラ染め、そして経年変化による”育てる楽しみ”。
インディゴ染めは、そんなおしゃれ心をくすぐる魅力にあふれています。
人類がずっと愛してきたインディゴ染めの魅力を私たちも未来に伝えていきたいですね。
コロモビトではあなたを魅力的にする情報をお届けしていきますので、
またお越しいただけましたら幸いです。
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最後まで読んでいただきありがとうございました!