スカジャンとベトジャン…あなたはどっち派?歴史と刺繍の違いから選ぶ一着

大胆な刺繍が印象的なスカジャンベトジャン
実は、ただのアウターではなく、時代を映すファッションアイコンのひとつでもあります。

ヴィンテージの味わいを醸し出しながらも、現代的な着こなしにも馴染むことから、世代を超えて多くの人に愛されている人気アイテムです。
そこで今回は、両アイテムの誕生から、デザインの特徴や違いについて、スカジャン・ベトジャンの魅力を余すところなく解説します。

目次
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スカジャンとは

1960年代ごろからスカジャンと呼ばれるようになったと言われており、諸説ありますが「横須賀ジャンパー」の略称が最も有力とされています。

そのことから、横須賀で作られたジャンパーだと思われがちですが、実はスカジャン発祥の地は群馬県桐生市なのです。

略称はなぜ「スカジャン」?

桐生市が発祥の地なら"キリジャン"と呼ばれるのでは…と、思う方が多いのではないでしょうか。

桐生市ではスカジャンの製造は行っていたものの、実は、ほぼ販売はされていなかったそうです。
米軍基地がある横須賀のほうが買い手も多いため、あくまで桐生市はスカジャンを製造する地でありました。

つまり、スカジャンは“桐生生まれ・横須賀育ち”のジャケットなのです。

刺繍の街、桐生

引用:TOYO ENTERPRISE COMPANY LTD.

「刺繍の街」として名高い桐生。

その中でも特に有名なのが、スカジャンにも用いられる横振り刺繍です。
横振り刺繍は、針が横に振れる専用ミシンを使い、布を手で大きく動かしながら施す技法。

引用:TOYO ENTERPRISE COMPANY LTD.

大きな図柄を腕全体を使って描くように仕上げるため、習得には数十年の経験が必要とされ、まさに「刺繍で描かれる絵画」とも言える繊細さと迫力が魅力です。

スーベニア品として流行

戦後、桐生市を訪れた米兵が、軍服に記念として刺繍を入れるようになりました。
これをきっかけに、桐生刺繍は米兵の間で瞬く間に大流行となります。

1940〜50年代には、桐生市の業者が米軍駐留地に店舗を構え、米兵向けのスーベニア(お土産)として大量の刺繍製品を製造。
スカジャンをはじめ、ワッペンやブラウス、ネクタイ、手拭いなどが人気を集めました。

引用:TOYO ENTERPRISE COMPANY LTD.

特に注目されたのは、和柄や虎、龍、鷲などの派手な刺繍が施されたジャンパーで、米海軍の主要基地がある横須賀では、多くの米兵が着用していました。
これに触発された周囲の日本の若者たちも注目し、スカジャンブームが起こることとなります。

最近では、2020年東京オリンピックの公式ライセンス商品として再び話題となりました。

ベトジャンとは

引用:TOYO ENTERPRISE COMPANY LTD.

スカジャンに比べると知名度は低いですが、コアなファンが多く、アメカジやミリタリーウェアの定番アイテムとして愛されています。

ベトナム戦争中に広まったベトジャン

スカジャンと同じくベトジャンも戦争をきっかけに誕生したアイテムの一つ。
ベトナム戦争中に、米兵が現地の仕立て屋に使用していたパラシュートや寝袋などを、ジャケットに仕立て直してもらったのが始まりだといわれています。また、スカジャンと同じく母国へのお土産として持ち帰っていたため、スーベニアジャケットとも呼ばれていました。

戦場の記憶を刻む刺繍

ジャケットには、主に戦場での記録や所属部隊、ベトナムでの任地などの刺繍が施されていました。
また、ベトナム戦争中の生活は危険で過酷なものだったとされており、米兵たちの多くは「戦場から無事帰還したい」「体験を忘れたくない」などといった思いが強かったといわれています。

なぜ虎や福が刺繍されたのか?

「"虎"や"福"がなぜベトジャンに…?」と思う方も多いのではないでしょうか。

ここでは、刺繍に込められた意味もう少し深堀りしていきましょう。

・虎

引用:TOYO ENTERPRISE COMPANY LTD.

スカジャンのようにかっこいい迫力のある虎ではなく、ゆるめの虎が印象的なベトジャン。
古代中国の時代から神に近い存在、神秘的なのに恐ろしい存在と崇拝されてきたのが虎。
また、"身を守ってくれる特別な存在"と思われていることから、無事に帰還できるようにという願いを込めて刺繍されていることが多いのです。


・福

福禄寿という中国の道教の七福神の一人で長寿や幸福を象徴する神様とされています。
"福"という一文字に「福(幸福)・禄(生活の安定)・寿(長寿)ができるように」という願いを込められて刺繍されていたといわれています。

スカジャン派?ベトジャン派?

どちらも戦争がきっかけに誕生したファッションアイテム。
誕生までの背景を知ることで、スカジャンまたはベトジャンを欲しくなったという方もいるのではないでしょうか。

それぞれの素材や刺繍の雰囲気、サイズ感の違いを知ることでより魅力を感じられるようになります。

ここでは、スカジャンとベトジャンの違いをご紹介します。

素材の違い

 スカジャン

主にサテンやベロア(別珍)。
また、リバーシブルで着れるもの多く表と裏で生地の素材が違うことがあります。

ベトジャン

当初はパラシュートや寝袋で作られていました。
現代では、コットンやナイロン、ポリエステル混紡などで作られています。

刺繍デザインの違い

スカジャン

和柄や龍・虎・鷲などのモチーフが特に多いです。
背中全体に刺繍を施していることが多く、大胆で力強い迫力のあるデザインが多く華やかで豪華な雰囲気が大半です。

引用:TOYO ENTERPRISE COMPANY LTD.

ベトジャン

ゆるい虎や福の文字、ベトナムの地図や地名など遊び心のあるデザインが多め。
アメカジやミリタリー感のあるデザインも多く存在します。
メッセージ性のある文章や戦争に関するモチーフもデザインされていることもあります。

シルエット・サイズ感の違い

スカジャン

基本の形がベースボールジャケットなので、ややゆったりめに作られていることがほとんど。
少し厚手のトップスの上からでも羽織れるので秋~冬は厚手の服の上から羽織るのにぴったりです。

ベトジャン

当初はパラシュートや寝袋をリメイクしていたため、比較的ジャストサイズや細身のシルエットが多いのが特徴です。
春や秋は薄手の服の上から羽織るのにちょうどよく、気軽にコーデを楽しめます。

おわりに

歴史や文化を背負ったスカジャンとベトジャン。

どちらも、それぞれにしかない魅力があります。

一着取り入れるだけでコーディネートの主役になり、着る人の個性を引き立ててくれる存在となります。

ぜひ、自分のスタイルに合う一枚を選んで、日常に取り入れてみてください。

この記事の執筆者 てら
この記事の執筆者 てら
■身長:155■趣味:ゲーム、推し活■好きな服(スタイル):古着、ストリート■座右の銘:迷うくらいなら、やってみる
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