ハンズオングリップ|ウルトラウォーカー・ワタナベが「手袋の聖地」で見た!効率度外視の“精度に振り切った”こだわりとは?
どうも!
ウルトラウォーキングを愛し、ウォーキングの女神に愛されたい男、コロモビト.ライターのワタナベです。
突然ですが皆さん、「手袋」ってどう選んでますか?
「とりあえず暖かければいい」
「サイズなんてSかMくらいでしょ?」
ノンノンノン!
冬でも長距離を歩く私にとって、手袋はシューズと同じくらい重要な“ギア”なんです。
手先が冷えると体力が奪われるし、スマホの操作や行動食を摂取するたびに着脱するストレスは、長時間歩くほどジワジワ効いてくる。
そんな私が今回、最高の相棒を求めてやってきたのは——
日本の手袋産地として知られる「香川県・東かがわ市」。
現地では「国内有数の産地」と語られる場所で、国内生産の大きな割合を担う、“9割とも言われる”手袋の街です。
そして、この地に訪れた最大の理由が、「ハンズオングリップ(handson grip)」というブランド。
結論から言います。
モノづくりへの執念が、尋常じゃないレベルでした。
今回は、効率化の時代に逆行するハンズオングリップの工場へ潜入取材。
その衝撃の裏側をレポートします。
工場なのに…音がしない!?

<まずは記念撮影>
さっそく、ハンズオングリップを手がける老舗メーカー「サングローブ」さんの工場へお邪魔しました。
縫製工場といえば、ミシンの「ダダダダダッ!」という轟音が響き渡っているイメージですよね?
気合を入れて扉を開けた私(ワタナベ)。しかし……。

<レザーグローブに使用する革を裁断中>
え、今日お休みですか? と一瞬勘違いするくらい静か。
でも確かに、従業員の方たちは作業しています。生地を整え、裁断を進めているようでした。
さらに奥へ進み、次は縫製作業場へ——。

<縫製工場内>
ずらりと並ぶミシン。
期待していた迫力のある「ダダダダダッ!」ではなく、
「トコトコ……トコトコ……」
なんとも慎ましいリズムだけ。
え、何これ。静かすぎる。
案内してくれた内海さんに聞いてみました。
ワタナベ「一般的な縫製工場のイメージと違って、かなり静かじゃないですか?」
内海さん「あはは(笑)。実はそれが、うちの手袋の“秘密”なんです」
聞けば、手袋の縫製というのは「超」がつくほど特殊なんだそう。
一般的な洋服の縫い代が1cm前後あるのに対し、手袋は——わずか2mm。

<ピンセットを使ってミシンを巧みに操っています>
内海さん「直線なら一気に縫えますが、手袋は曲線だらけ。指でつかめないので、ピンセットで生地をコントロールしながら、数針進めては止めて、また数針……と縫っていくんです」
ワタナベ「ピ、ピンセット!? ミシン踏みっぱなしじゃないから音がしないんですか!」
内海さん「そうそう。だから“ダダダ”じゃなくて“トコトコ”なんです」
なるほど。
この「トコトコ……」という静寂のリズムこそが、あの極上のフィット感を生み出していたんですね。
“9割”の裏にある現実

<サングローブ最寄りの三本松駅>
東かがわ市は、国内製手袋の生産量が“9割ともいわれる”手袋の街。
小さな街ながら、主要手袋企業の本社が集中しています。
ただし——ここが重要。
この言葉は「産地の強さ」を示す一方で、産業の現実も抱えています。

内海さん「以前に比べれば手袋作りに関わる企業はずいぶん減りました。素材を扱う会社なども含めて60社ほどが市内にありますが、純粋に手袋を作っているのは20社程度でしょう」
そして、続けてこう言います。
内海さん「日本で手袋を作れる会社は、ほぼなくなりつつあります。国内生産で対応している会社も存在しますが、80歳前後の職人がほとんど」
——80歳前後。
ワタナベ「え……。じゃあ、この技術って……」
内海さん「そう。“メイド・イン・ジャパンで手袋が作れなくなる”かもしれない。それは、すごく寂しいなって感じたんです」
そこで内海さんは、若い縫製員を募集することにしました。
勤続60年のベテランが元気なうちに、技術を継承してもらうために。
内海さん「いま縫製場で縫ってくれてるのは、30代から40代前半ぐらいの人たちが中心です」
今、繋がないと間に合わない。
そんな切迫した空気を、確かに感じました。
産業の始まりがドラマすぎる件
ここでちょっと休憩。
産地の“起点”の話が……ドラマすぎる。
手袋作りが始まったきっかけは——
1888(明治21)年。寺の住職が、女性と駆け落ちしたこと。

<左:棚次辰吉像 右:両児舜礼の碑>
住職の名は、両児舜礼(ふたごしゅんれい)。
身分の違いで結婚が認められず大阪へ移り住み、生計を立てるために始めたのが、メリヤス製の「手靴(てぐつ)」——指なし手袋の縫製でした。
その後、従兄弟の棚次辰吉が技術を引き継ぎ、1899(明治32)年に生まれ故郷へ持ち帰って手袋製造所「積善商会」を設立。
東かがわの手袋産業が始まったのです。
当時、主要産業だった製糖業や製塩業は輸入品に押されていました。
だからこそ、新しい産業が求められていた——。
産業のはじまりは、いつだって“人間の事情”が濃いです。
OEMの限界を超えるために…
もともとサングローブが手がけていたのはOEM製品。
ファッショングローブ、防寒用手袋、革手袋——そしてスポーツ分野へ。ゴルフグローブやバッティンググローブなどもOEMで請け負ってきました。
しかし、転機が訪れます。
2014年、オリジナルブランド「ハンズオングリップ」誕生。

<工場に隣接するセレクトショップにずらりと並ぶハンズオングリップ>
内海さん「このままのやり方だと事業が尻すぼみになっていくって話を、兄弟でしていました。OEMだと発注数を決められないし、売り上げも取引先任せ。でも、技術には自信があったんです」
サングローブの得意技は、「安く、早く」ではなく——
おもしろい素材/おもしろい技術/他がやってない提案。
でも、その提案は必ずしも世に出ない。
納期、価格、いろんな理由で“途中で消える”技術や材料があった。
内海さん「それなら“自社ブランドでやっちゃうか”って。僕たちがおもしろいと思ってた技術や素材を、ぶち込んで立ち上げたんです」
アウトドアでも使える。
そのまま街でも使える。
ファッションとしても認知される手袋を——。
そして社内には登山、トレイルラン、MTB好きも多い。
フィールドがわかる人間が、作っている。
この時点で、強い。
効率度外視の裁断がヤバい

<シンプルなモデルでも片手のパーツが10点ほど…両手分となると…どんだけ!?>
ここからが、私が一番震えたエピソード。
通常、海外の大量生産だと、生地を40〜50枚くらい重ねて一気に「ガチャン!」と切るのが常識。
効率を考えれば当然です。
でも、ハンズオングリップは違いました。

内海さん「うちは、2〜3枚しか重ねません」
ワタナベ「えっ? 2枚? 効率悪すぎませんか?」
内海さん「悪いです(笑)。でも、手袋ってMとLの幅の違いが、たった3〜4mmしかないんですよ」

ワタナベ「さ、3mm……!」
この瞬間、私、震えました。
靴を買うとき、0.5cmのサイズ感にこだわりますよね?
手袋は——3〜4mmでサイズが変わる。
内海さん「何十枚も重ねると、どうしても上と下で数ミリのズレが出る。そうすると、MサイズのつもりがLサイズになっちゃうこともある。だから、効率を捨ててでも誤差が出ないように2〜3枚で切るんです」
効率を捨てる。
その代わりに、フィットを得る。
……こういう話、ギア好きにはたまりません。
「第2の皮膚」ってこういうことか

そんな職人魂の結晶、代表作のメリノウールグローブ「ホーボー」を装着してみました。
スッ……

ワタナベ「……ッ!!??」
なんだこれ。
「着けている」というより、「皮膚が1枚増えた」感覚。
メリノウール特有の優しい肌触りも最高ですが、何より「余計なシワ」が一切出ない。
指を曲げても、伸ばしても、生地が手に吸い付いてくる。
しかも、親指と人差し指の先端が出せる設計。細かな作業やスマホ操作ができる。
手首も長めで、深く保護しながらアウターグローブとの干渉も防ぐ。
内海さん曰く、「“街でも山でも使える”を目指して、機能美を追求しました」とのこと。
もう一つの注目作「リバティ」

さらに注目したいのが、伸縮性と保温性を備えた素材を使った「リバティ」。
手のひら側には滑り止め効果をもたせたプリント加工も施されています。
そして、ここでも“裁断哲学”が効いてくる。
伸縮性が高い素材は、重ねて切るほど誤差が増える。だからこそ、2〜3枚。

さらに抜き型の刃も、手入れが甘いと誤差が出る。
この土地に抜き型を作る工場があることも、大きな利点だと言います。
産地って“ただ工場が集まってる場所”じゃない。
精度を支える要素が、地層みたいに積もってる場所なんだな……と実感。
手に合ったものをしっかり選ぶ

取材の最後に、内海さんの言葉が刺さりました。
内海さん「この地域の人って、手袋って買うもんじゃなくて、人からもらうものなんです。幼いころから、手にぴったりの手袋をくれる人がいる。だからこそ“いい手袋”は肌に密着して気持ちいいってことを、多くの人に伝えていきたいんです」
たしかに。
靴はサイズを測って買うのに、手袋は適当に選んでたかも……と反省です。
私が次に選んだ相棒は…

私の現行相棒は「Bounce|バウンス」。冬の長距離でも頼れる一枚。
そして今回、次の相棒に選んだのが——

次の相棒は「Breezy|ブリージー」。違いは“指先”にある。
「バウンスとほぼ一緒じゃない?」と思ったそこのあなた。
ノンノンノン!
違いは、ずばり“指先”。
実際に長距離ウォークで使ってみた感想は、次回しっかりレビューします。
おわりに
いかがでしたでしょうか。
縫い代2mm、2〜3枚裁断、サイズ差3〜4mm。
数字だけ聞くと細かすぎる。でも、その細かさが、装着した瞬間の「気持ちよさ」に直結していました。
手袋はただの防寒具じゃなく、手の自由を守る道具。
だからこそ“とりあえず”で選ぶのではなく、自分の手に合う相棒を選んでみてください。
次回は、私が選んだ「Breezy|ブリージー」を実際に長距離ウォークで試したリアルな使用感をお届けします。お楽しみに!
「あのブランドのここが知りたい!」や「ワタナベ歩くの頑張れ!」のメッセージはこちらから。
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