BARACUTA バラクータ
すべてのハリントンジャケットは、マンチェスターの一着から始まった
1. 1937年、雨の街マンチェスターから生まれた英国の名品
流行が変わっても、ワードローブから消えない服があります。シンプルだからこそ合わせる服を選ばず、年齢を重ねても自然に袖を通せる。そんな「定番」という言葉がよく似合う英国ブランドが、BARACUTA(バラクータ)です。
その歴史が始まったのは1937年、イギリス・マンチェスター。創業者のジョンとアイザック・ミラー兄弟は、ブランドを立ち上げる以前からレインウェアの製造に携わっていました。雨の多いマンチェスターで培った経験を背景に、彼らが目指したのは、英国の雨から身を守りながらスタイリッシュに着られるアウターでした。
そして同じ1937年、兄弟がゴルフ場で目にしたのが、動きにくいコートに悩むゴルファーたちの姿。その課題から生まれた一着が、後に世界中へ広がる名作「G9」です。スポーツウェアとしての合理性から始まり、やがてファッション史に名を刻む存在へ。BARACUTAの物語は、この一着から大きく動き始めます。
2. ゴルフのための機能美。「G9」に宿る完成されたディテール
BARACUTAを語るうえで欠かせないのが、ブランドを象徴する「G9」。その名前の「G」はGolfに由来し、「9」はゴルフコースの9ホールを意味しています。もともとは、雨や風の多いマンチェスターでゴルファーが快適にプレーするために考案されたジャケットでした。
首元には2つのボタンを備えたドッグイヤーカラー。袖口と裾には身体にフィットするリブを配し、フロントにはゴルフボールを2個収納することを想定した斜めのポケットを採用。そして背面には、傘のような形から名付けられた「アンブレラヨーク」が備わっています。内側のベンチレーションによって通気性を確保しながら、雨を身体から逃がすために考えられたBARACUTAを象徴するディテールです。
一見すると極めてシンプル。しかし、その姿を形作る一つひとつに理由がある。装飾のためではなく、必要な機能を突き詰めた結果として生まれた美しさこそ、G9が長く愛されてきた理由のひとつです。
3. 一目でわかるフレーザータータン。英国の歴史を内側に纏う
ジップを開けた瞬間に現れる鮮やかなチェック柄も、G9を象徴するディテールのひとつ。それが「フレーザータータン」です。
1938年、ミラー兄弟はスコットランドのフレーザー・オブ・ロバット家に、その一族に伝わるタータンをBARACUTAのウェアに使用する許可を求めました。その申し出が認められたことで、フレーザータータンはG9を完成させるシグネチャーとして採用されます。
外から見れば、無駄を削ぎ落とした端正なショートジャケット。しかし内側には、英国らしい伝統を感じさせるタータンが潜んでいる。その控えめなコントラストもBARACUTAならではの魅力です。主張しすぎず、それでいて一目で出自がわかる。長く着るほど、このさりげなさが大人の装いにしっくりと馴染んでいきます。
4. 「ハリントンジャケット」の名を生んだ、カルチャーとの深い関係
今ではショート丈ブルゾンの一つのカテゴリーとして定着した「ハリントンジャケット」。実はこの呼び名も、BARACUTAのG9と深く結びついています。
1964年、アメリカのテレビドラマ『Peyton Place』で、ライアン・オニール演じるロドニー・ハリントンがG9を着用。その後、ロンドンの「The Ivy Shop」を開いたジョン・サイモンズが、店頭のG9を「Harrington Jacket」として紹介したことで、その名称が広く定着していきました。
G9はゴルフウェアという出発点を越え、1950年代にはアメリカのアイビーリーグへ、さらに英国ではモッズやパンクをはじめとするさまざまなサブカルチャーへと浸透していきます。特定の世代やスタイルだけに閉じることなく、着る人によって表情を変えながら受け継がれてきたこと。それこそが、G9を単なるクラシックではなく、今も生き続ける定番にしているのです。
5. デニムにもスラックスにも。大人になってこそ似合う「G9」
誕生から長い年月を経てもG9が古びて見えない理由は、そのデザインが驚くほどシンプルだから。コンパクトな着丈と端正な襟元は、デニムやチノパンと合わせれば軽快に、スラックスやシャツと合わせれば品のあるスタイルに馴染みます。
Tシャツの上からさらりと羽織る春秋のライトアウターとしてはもちろん、ニットやシャツを挟めばトラッドな着こなしにも好相性。スポーツをルーツに持つ軽快さと、英国服らしい品格を同時に備えているからこそ、カジュアルときれいめの境界を自然に行き来できます。
若い頃には軽快なブルゾンとして、年齢を重ねれば落ち着いた大人の定番として。同じ一着でも、着る人とともに見え方が変わっていく。流行を追うのではなく、長く付き合える服を選びたい人にこそ袖を通してほしい、英国が生んだ永遠のスタンダードです。





